王諺城君,王宇哲君(OB)ののハイパースペクトル(マルチスペクトル)イメージングを用いた新しい方法で,調合によらずに中性化深さと迅速・分析できる手法(しかも,フェノールフタレイン法と互換可能)に関する研究がCement and Concrete Compositeに採択されました.
近年になって,マルチスペクトルイメージング,ハイパースペクトルイメージングを用いた,コンクリートに含まれる成分・水分分布の評価をする研究がでてくるようになりました.その多くが,試験体の条件やサンプルの配合を限定した分析にとどまっておりました.
北海道大学工学部建築材料学研究室では,NEDOグリーン・イノベーション基金「CO₂排出削減・固定量最大化コンクリートの品質管理・固定量評価手法に関する技術開発/コンクリートにおけるCO₂固定量評価の標準化に関する研究開発」の研究助成を受けながら,コンクリートの配合によらず,また表面の水分状態によらず,既設コンクリートの調査孔の断面やコア供試体を用いて,フェノールフタレインと同等の中性化深さ評価をコアサンプルへの汚染なしに実現する手法を構築しました.下図は今回の論文に掲載している調査結果の一部ですが,配合情報がないコンクリートコアに対して,フェノールフタレイン散布した場合と同等の評価結果を得ることができます.また,この試験体だけでなく,本手法を用いた他の調査においても,配合不明のコンクリートに対して,同様の結果が得られています.また,今回のハイパースペクトル(マルチスペクトル)イメージングでは,広く普及している400nm-1700nm範囲をカバーするカメラではなく, 日本ではケイエルブイ社が取り扱う960–2500nmのワイドレンジをカバーする撮影機を用いており,特にコンクリートに関連する波長領域として1900-2500nmの範囲が,炭酸カルシウム,水酸化カルシウムなどを中心とするCa系の鉱物にとって,極めて重要な役割を果たすことも明らかになっています.


また,この手法は現場でも利用することができます.論文では,探査用のコア孔に「竹を45°にカットした断面形状をした楕円状ミラー(通称タケノコ)」を差し込み,このミラーに映り込むコンクリート内壁をマルチスペクトルで撮影するだけで深さ方向の中性化度合いがラボ同様に得られます.もちろんラボ観察よりも粗いですが,フェノールでの呈色深さは十分わかります.さらに,我々のグループでは,この調査を実際の建設現場でも実施しており,暗所現場において,マルチスペクトルカメラと携帯用のハロゲンライトを持ち込んで実用性の検証も行っています.1箇所あたりの撮影はカメラやライティングの設営も含めて5~10分程度で終了し,実務的に連続的作業が可能なこともわかっています.(なお,このハイパースペクトルスペクトルカメラはドローン搭載も可能ですので,スプレーを散布するフェノールフタレイン法と異なり,技術的にはドローンによる自走撮影も可能と考えられます.
また,この手の低侵襲的検査手法だと,「含水していたら結果が大幅に変わるんじゃない?近赤外線だし,,」という,お話もいただきそうです.確かに,コア抜きした直後の穴が水濡れしている場合など,水分の状況が多様に変わる場合には測定に影響をあたえそうです.ということで,この論文では,含水・水濡れ状態→乾燥までの経過観察測定も行っています.結果,ほぼ影響を受けずに評価が可能であることも例証しております.詳しくは論文を御覧ください.

ラボと同様に中性化深さが画像のみで判定できるようになった
もしご興味があある方はぜひ御覧ください.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0958946526000387