まだ全然とりかかれていないのですが、新しい建設系高分子用の紫外線暴露装置のスクラッチをはじめました。。。
まぁ暴露面の温湿度精密管理ってのは、うちの装置の専売特許として、これができる二台目になります。これを使ってどういう研究を進めていくか。寝る前に布団に入っているときにほかの仕事を忘れるために考え始めました。
促進装置と自然暴露の違いを生み出すのは、紫外線強度ではなくて酸素濃度だということを、ここ数年の我々のグループでは主張してきているわけですが、かといって酸素濃度をあげると危ないし、オゾン水とか過酸化水素水をシャワーするというのもなかなか効果が上がらないということが報告されています。酸化するときにどうしても水ができてしまうので、ただの酸素分子が界面に到達するのとワケが違うからです。
また、オレフィンの紫外線劣化に関するレビュー論文をみると、自然劣化において、日変動・年変動はやはり大きな変動には違いなく、こうなると自然暴露には高分子劣化にとって極めて多要素の現象が入り混じっていることにもう少し配慮して、再整理するべきだと考えています。とにかくエイやって実験してデータ見せて「あいませんでした。以上!」みたいな考察がほとんです。これまでも、自然劣化の要素を切り分けた人工環境装置は存在したのですが、我々のグループはそこで新たな研究を進めたいと思っています。
促進劣化の論文を色々見てきた経験から思うことは、大気中の酸素が常に一定濃度で供給されるという単純な環境のもとで、「紫外線律速で単純な酸化切断」が進んでいる範囲はおそらく思いのほか多くないのです。この紫外線律速で単純な酸化切断が起こりうる温度・紫外線強度範囲を調べることが、そもそもの促進劣化を行う上でpreliminaryに大事であり、促進環境を作る上で、ここに実績あるデータが存在しないわけです。これを(1)とします。
もう一つは、もっと酸素濃度を見ないといけない、ということです。促進劣化と自然劣化の関係性には重要な傾向があり、それは黄変や表面の傾向は、熱力学的に加速性を評価することができるけども、その他の物性変化の加速性はうまく評価できない、ということです。光の強度減衰は距離の逆二乗であり、紫外線強度を10倍にしても距離の減衰傾向は変わりません。よって、ラジカルは10倍奥深くまで生成されます。しかし酸素の内部拡散は、とんでもなく小さい酸素の拡散係数に依存してますので、表面の酸素濃度あげたところで、バルク部分の酸素濃度は表面以外ほぼゼロということになっています。この光の距離減衰 VS 物質拡散による濃度分布のバランスが自然暴露と促進暴露では全く違っている、ということになります。
自然暴露された高分子のバルク部分も、促進暴露された高分子のバルク部分も、基本的には同じです。それは酸素濃度が薄い部分の架橋速度がどうなっているかという観点でとらえる必要がある。当然、紫外線強度律速だと思われるのですが、じゃあその時に紫外線強度によって、架橋速度がどんな変化をするのか、このデータもありません。これを(2)とします。
この(1)(2)あたりを取り組める新型暴露装置をスクラッチ中。