代表的な発泡プラスチック断熱材であるXPS(押出発泡ポリスチレン)とPF(フェノールフォーム)に関して,永らく未解明だった「水蒸気および経時による物理化学的な変化」が,キャラクタライゼーションされました。従来,断熱材は経年による熱伝導率の変化が少ないことから,「設置された後の材料学的変化がほとんど見られない」という見解が大勢を占めており,実際,わが国でもそのような見解が大勢を占めていました。しかし,ここ4~5年で,欧米を中心に,そうではなく,材料的な変化は明確にあるのではないか,全部ではないですが,一部のサンプルについて,設置環境が影響したと思われる機械特性変化(寸法変化)やin-situの熱物性変化(熱伝導率変化)が指摘されてきました。本研究はそのような現象をうけ,とくに,湿度が導入された場合に着目して,XPS(押出発泡ポリスチレン)とPF(フェノールフォーム)に関して,かなり多様なデータを蓄積した結果を報告しています。
•XPS は経時による構造変化を示すが、水蒸気によってあまり大きな影響を受けない。
•PFは長期のエージングにより重合を続け、不均一なセル構造を引き起こす。
•PFは水蒸気によって加水分解が起こり、細孔の粗大化を引き起こす。
こうした結果を踏まえて,ZEBやZEHのエネルギー収支は,断熱材の変化について新たな要素を考慮して再検討する必要があると思われます。詳しくは下記論文をご覧ください。