
本論文は、コンクリートの主要な水和物であるカルシウムシリケート水和物(C-S-H)の、乾湿繰り返し(ウェット・ドライサイクル)環境下における炭酸化メカニズムと反応速度論を調査した研究です 。 実験では、合成したC-S-Hペーストを様々な相対湿度(RH)条件下で炭酸化させています.。その結果、50%〜90%の乾湿繰り返し環境下におけるC-S-Hの炭酸化率は、一定の湿度(70% RH)下と比較して14日後に1.67倍高くなることが示されました 。 この炭酸化促進は、乾燥フェーズでCO₂が空隙に侵入し、続く湿潤フェーズでCO₂とC-S-Hの溶解が促進されてイオン濃度が高まり、次の乾燥フェーズで炭酸カルシウムが沈殿するというサイクル(CO₂溶解とCa²⁺移動の向上)に起因します 。また、乾湿の繰り返しは炭酸化・乾燥収縮による微視的なひび割れを広げ、CO₂の拡散をさらに容易にします 。 さらに、通常のセメントペーストと異なり、C-S-Hの炭酸化では「バテライト」と呼ばれる準安定相の炭酸カルシウムが主生成物(90%以上)として得られ 、これは低pHや細孔内閉じ込め効果、微量のMg存在によって熱力学的に安定化することがシミュレーションで明らかにされています。
また,我々のグループの特徴として,炭酸化させるときに,実務的コストを意識して,大気および粗粒分を用いてCO2固定促進を行うという研究アプローチを採用することが多いです.この研究も,我々の他の研究と同様に,0.6-1.18mmの顆粒状サンプルと大気CO2を用いて実施しており,他の粗粒分の大気炭酸化とあわせて,再資源化・CO2固定促進がもとめられる廃コンクリートに関連する技術シリーズとなります.廃棄コンクリートのCO₂吸収効率を大幅に向上させ、持続可能な建設分野における有効利用を促進する有望な技術として今後の発展を進めていきたいと思います.