コンクリート工学分野では「コンクリートで船ができるのではないか」と思って技術開発を進めてきた長い歴史がある。例えば,第一次世界大戦,第二次世界大戦中,鉄不足の中で,コンクリート製のタンカーや資材運搬船を製造し,実際に運用した事例が世界中にある。また,一次運用だけでなく運用後の再利用,つまり,二次運用もされている。例えば,第一次世界大戦時に,フランスで運用されたコンクリート製の石炭輸送船が,戦後,「難民避難所」として利用されている.このときには,救世軍(フランスの難民のための民間支援団体)から,世界的な建築家,ル・コルビュジェに依頼され,当時同事務所にいた前川國男によって改修・運用されたというお話もあるようである。また,日本においても,第二次世界大戦中に輸送船として利用されたンクリート船が,終戦とともに海岸に沈められ,堤防として今も利用されている。(このあたりの経緯がコミカライズされ,ビッグコミックオリジナルで「コンクリートの船」というタイトルで2026年4月現在連載中だそうである。)このように,コンクリート船の技術開発の歴史は,鉄筋コンクリートの歴史と同程度に連綿とあり,そして,現存する構造体でもある。(ご興味のある方はWikipediaのコンクリート船の記事が詳しすぎるのでそちらをどうぞ(日本語)(英語))
性能面を考察すると,コンクリートの船は,鉄やFRPでできた船に比べると,重くなりやすく,このために,燃費が悪くなりやすい欠点があるようである。コンクリート船の性能に関する技術的なレビューは,古くから国内外で散見され,この点の指摘が多い。そして,この課題を解決するための軽量化,薄肉化,断面設計,施工方法などが提案されている.現代においても,コンクリート船を広義にした「水上に浮くコンクリートの構造体」として,「メガフロート」や「浮体式の風力発電機」が,運用・実用されており,こうした知見が生かされているかもしれない.
また,教育的な観点からも,アメリカの土木学会や日本の土木学会において,人が乗り込み,漕いで競い合う「コンクリートカヌー選手権(日本)(アメリカ)」が盛んにおこなわれている。コンクリートカヌー選手権の写真や動画を拝見していると,すごく楽しそうだ。もし,世界統一選手権があったとしたら,ゴリゴリの筋肉野郎がギュウギュウに詰め込まれたカヌーが勝ち上がり,お立ち台で大胸筋をブルンブルンしてほしいものだ.でも,そうじゃない,もうちょっと知的な,技術や知恵がせめぎあう「コンクリートの船の競技」があっても教育的に面白いんじゃないだろうか.
そこで,コンクリートやモルタルでできた「ミニ・モルタル・モーターボート(MMMB)」で,ミニ四駆みたいなチューニングを行い,「ボートレース」をやる,というのはどうだろうと考えてみた。
モルタルでボートを作る場合に,重要になってくるのは浮力と荷重のバランスである。通常のコンクリート構造物で,積極的に浮かせることを前提に,浮力を扱うことは少ない.また,当然だが,水との抵抗が少なく,推進力を得やすい形状が望ましい。船のことあんまり知らんけど。
色々と御託を並べたが,思いついてしまったので,もう一気にやってしまおう。
下図はクリアフォルダを用いて,ニ枚の微妙に形状の異なる舟型枠を作り,スキマにモルタルを打ち込み,1日後脱型した。
型枠を作成するために作った図面はこちら

Making molds with plastic folders

Stacking

注意深く脱型し数日間の水中養生を経て,出来上がったのが下図です。型枠や打ち込み方法はもっと工夫した方がいいかもしれない。思い付きで動いているので,ペラペラのクリアファイル型枠に対策することを考えていなかった。例えば,砂の中に型枠を埋めて打込んだり,造船ドックを参考に,別の製作方法を考案してみてもいいかもしれない。

Demolded mortar boats. Left boat is reparing to seal the wall and bottom-deck and curing with wet paper.
モーターボートができるとなると,あとはコースである。まぁ池に浮かべるわけにもいかないし,せっかくなので,これもコンクリートで製作することにした。下図のようにコンクリートU字溝を連結しゴミ袋やブルーシートで養生してプールにする。なんか普通にできた。まぁそうだよな。(テスト用に走らせているのは,おもちゃのプラスチックボート)
最後に,作ったモルタルボートに,モーターを装着し,バケツ内で試走させてみた。↓
(タミヤ製水中モーターを吸盤でくっつけている。濡れていても,かなりくっつきが良い。即採用だ。)
あと,バスタブでも実施.普通に↑のプラスチックボートと同じぐらいの速度で走れてますね.